交際費として認められるのはどんな費用?交際費は経費扱いとなるの?など意外と知らない「交際費等に関すること」ですが、交際費が経費と認められるには、いくつかの条件が有ります。交際費等の主な費用や間違えやすい費用、法人の交際費等の損金不算入制度など、交際費等について正しく理解し処理を行う事で、節税が期待できるのです。
事業者により「交際費、接待交際費、交際接待費」などいろいろな勘定科目名で扱われることが有りますが、当記事内では「交際費等」として表記しています。
※平成30年度税制改正により、【交際費等の損金不算入制度】の適用期限が2年間延長されました。(平成30年6月22日追記)
目次
1.交際費等とは
交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出する費用をいいます。
◆交際費等の目的と相手先について
目 的: 事業の関係先・関係者との親睦を密にし、事業運営をスムーズに行えるようにすること
相手先: 事業に関係する次のような者であること
- 得意先や仕入先など、事業に関係する者(取引先)
- 事業に関係する自社の役員、従業員、株主等
- これから取引開始となるなど、近い将来事業に関係する者
交際費等は、以上の目的と相手先の要件を満たすものとなりますので、家族や友人、事業に関係しない者との飲食費その他は、交際費等とは認められません。
◆交際費等の範囲について
国税庁のHPでは、交際費の範囲及び交際費から除かれる費用について下記のように記載されています。
引用:国税庁HPより
2.交際費等の主な費用と間違えやすい費用
交際費等の主な費用の具体例と、交際費等と間違えやすい費用を表にまとめてみました。
<交際費等となる主な費用>
<交際費等と間違えやすい費用>
3.交際費等の損金不算入制度とは
交際費等がどのようなものかを説明してきましたが、税法上これら交際費等の全てが損金となるわけでは有りません。交際費等は「冗費(無駄な費用)を節約して企業の自己資本を充実し企業体質の強化を図る」という視点から、原則として損金不算入となります。しかし、中小法人については一定の配慮があり一定金額までは損金として認められてきました。
近年では平成26年度税制改正により、法人の交際費等の損金不算入制度に関する規定(措法61の4)が改正されました。この改正は「交際費等は事業活動に不可欠な経費であり、交際費等のための支出が消費の拡大へ通じ経済の活性化を図ることが可能である」との政策的背景により行われ、中小法人だけでなく大法人についても交際費等の一部を損金算入とすることが認められることとなりました。
<参考>損金と費用には、次のような違いがあります。
平成26年度の改正後の交際費等の損金不算入額の計算について、改正前との違いや大法人と中小法人(注1)との違いを見てみましょう
◆大法人は、交際費等の額のうち接待飲食費(注2)の額の50%に相当する金額までを損金の額に算入することができます。
◆中小法人(注1)は、事業年度ごとにA)、B)のいずれかを選択することができます。ただし、確定申告書等、修正申告書又は更正請求書に定額控除限度額の計算を記載した法人税〈別表15〉の添付がある場合に限り適用することができます。
A) 接待飲食費(注2)の額の50%に相当する金額を損金の額に算入すること
B) 次の式で計算した定額控除限度額までの金額を損金に算入すること
定額控除限度額= 800万円 × その事業年度の月数 ÷ 12 |
(1月に満たない端数があるときは、これを1月とします) |
1年間(12ヶ月)事業を行っていたなら、交際費等の年間800万円までの額について全額を損金に算入できることになります。(注1)中小法人とは、事業年度終了の日における資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人をいい、普通法人のうち事業年度終了の日において資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人などの一定の法人による完全支配関係がある子法人等を除きます
(注2)交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用(専らその法人の役員もしくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のための支出は除きます)で、帳簿書類に飲食費であることについて所定の事項が記載されているもの
※個人事業主の交際費等については、損金算入の上限がないので[交際費等の支出額=経費]とすることが可能です。ただし、交際費等の目的や相手先などについては、法人と同一です。
◆ 交際費等の損金不算入制度において「接待飲食費」と「接待飲食費以外の交際費等」、及び「交際費以外の費用」への分け方を、図にしてみました。
※接待飲食費で、1人当たり5000円以下の飲食費については注意が必要です。
帳簿書類に記載する所定の項目をまとめてみました。この記載があり会議の実体が伴っているなら「会議費」となります。ただし、会議の実体が伴っていない場合は、記載の有無に関係なく「交際費」となります。
受取った領収書・レシートの裏面などに同席された方の社名や人数などをメモをしておくと良いでしょう。
平成28年度税制改正では、接待飲食費に対する損金算入の特例(1人当たり5,000円以下の飲食費)及び、中小法人の年間800万円以下の全額損金算入特例が2年間延長されました。この特例は、平成30年3月31日までに開始する事業年度に適用されます。(平成29年9月末現在)
※平成30年度地方税制改正に「交際費の課税特例措置の延長」の要望が提出されています。
⇒ 平成30年度税制改正により、【交際費等の損金不算入制度】の適用期限が2年間延長されました。 「適用期限:平成32年3月31日までに開始する事業年度まで」となっています。(平成30年6月22日追記)
4.まとめ
交際費等には、「これは交際費」というような明確な基準がありません。しかし、税務調査では「交際費等の目的や相手先などの要件を満たした支出か」「帳簿書類に必要事項は記載されているか」などが、調査ポイントの一つとなります。また、法人税額を小さくしたいからと不必要な費用を支出しては本末転倒ですので気を付けましょう。やはり解りにくい交際費等についてですが、この記事が少しでも皆様のお役に立てたなら幸いです。
※ 損金算入・不算入については判断が難しいことが多くありますので、国税庁のホームページでの確認や税理士等の専門家へ相談されることをお勧めします。
法人税については、【節税の木】「今期すぐに実行できる!法人税節税対策の具体的な手法」の記事や、国税庁HPをご覧ください。(赤文字部分をクリックするとご覧いただけます)
【節税の木】「法人税節税対策の具体的な手法」 国税庁HP内 タックスアンサー「法人税」